こんにちは、伝統文化オンライン運営事務局です。
お能講師の山中先生にインタビューさせていただきました!
オンラインでお能レッスンを検討されている皆さまのお役に立てるよう、先生に様々な質問をぶつけてみました。
ぜひ、始める前の参考にしていただけますと幸いです。
まずは、先生のご紹介から!

【山中一馬先生】
文学座附属演劇研究所 講師(1997~2002)
東京及び牛久市をはじめ茨城県南を中心に能楽の指導・普及に努められており、学習院大学 能楽研究会の指導顧問や、茨城県民大学の講師など多数の経歴をお持ちの先生が、初心者の方にも親切丁寧に指導してくださいます。
※伝統文化オンラインでは山中先生の「お能(のう)入門講座」を開講しています!
山中一馬先生インタビュー
先生がお能を始められたきっかけと、その魅力にのめり込んだ理由を教えていただけますか。
大学に入ってからクラブに勧誘されたのがきっかけです。能楽研究会というクラブで、今は僕がそこを指導しているんですけどもね。
そのとき、「能楽」を「農学」だと勘違いしたんです。僕は田舎者だから、農業の話だと思って。
学習院って、目白にやたらと広い校庭があって、「どこかに畑でもあるのかな」と思って面白そうだからついていったら、実は農学とは全然違う話でした。
クラブに入ってから2か月程経ったときに、後に僕の師匠となる方の舞台を初めて見に行ったんです。
渋谷の観世能楽堂という、当時の僕からしたら大それた舞台でした。そこで本当にカルチャーショックを受けて。
「日本にこんなにすごい舞台芸術があるのか」と目の当たりにして、それで真面目にやってみようと思うようになったんです。
一生懸命やっていたら、3年生になった頃に、先生から「君、こっちの道でやってみたらどうだ」と言われました。
それで初めて内弟子というものになったんです。そして4年生の年、つまり内弟子1年目にはNHKに出させてもらったんです。
プロとして活動される中で、一番の喜びや「やってよかった」と感じる瞬間はどんなときでしょうか。
やっぱり舞台ですね。
舞台で「良かったかな」と思える瞬間です。
そういう瞬間が一番の喜びです。

お能に興味はあるけれど難しそうと感じている初心者が、最初にぶつかりやすい壁や悩みはどんなことでしょうか。
まず能楽は「そもそも何なのか」を知らない人が多い。
日本舞踊や歌舞伎はテレビ出演も多く露出があるから、何となく目に触れる機会があるんです。
でも能楽は、実際に見てみないと分からない人がほとんどです。
僕自身、大学からずっと東京にいて、35年前に茨城のかなりの田舎に引っ越してきたんですけど、そこでは能楽の「の」の字も知られていませんでした。
東京にいると毎週のように舞台があるのが当たり前なんですが、東京から1時間ほどのこの茨城では、「能楽って何?」という反応ばかりで。
これはまずいなと思って、それで地元でいろいろな活動を始めるようになって、今に至っています。
「興味はあっても、そもそも何なのか分からない」というのが最初の壁なんですよね。
ただ、ワークショップなどをやると、「何だろう」と思って来てくれる人はいるんです。
そのときにどれだけ興味深い話ができるか、それが一番大きいと思います。
いろんな場所で話す機会を重ねるうちに、少しずつ知識も増えて、面白い話ができるようになってきました。
「お能って何なの」、そこがスタート地点で、それをいかに分かりやすく話せるか、そこに尽きますね。
全くの未経験からお能を始められる場合、どのような準備や心構えが必要でしょうか。
僕自身もそうだったんですけど、本当に何も考えていなかったんですよね。堅苦しく考えすぎないことのほうが大事だと思います。
必要な道具としては、足袋や扇など最低限のものはありますけどね。
あと、今は撮影や録音についても、比較的おおらかになっていると思います。
僕自身、ビデオを撮ってもいいよ、録音してもいいよと普通に言っていますし、今は皆さん携帯で手軽に撮れますから、もう何でも自由にやってくださいという感じでオープンにしています。
教室に通うのと、オンラインレッスンとでは、どのような違いやメリットがあると思われますか。
オンラインでのお稽古で感じたのは、音がずれるということなんです。謡の稽古は、一緒に歌うことが基本なので、オンラインだとそこがなかなか難しい。
ワンフレーズ僕が歌って、それを真似してもらう、というのはできるんですけど、一緒に同時に歌うということができないんですよね。独特の難しさがありますね。
メリットとしては、海外の方にも教えられるという点は非常にいいと思います。
お能はライブ感が伝わることが大事なので、そこは対面の教室の方が良いですね。

先生のレッスンで、ここは大切にしているという指導のこだわりや特徴は何でしょうか。
お能は流儀によって全然違うんですよね。謡いにしても舞いにしても。
僕は金春流という流派なので、金春流の謡いや舞いがどういうものか、それをちゃんと理解してもらえるように教えることが、一番大事だと思っています。
実際に先生の稽古を受けられている生徒さんは、どのような変化や楽しさを実感されていますか。
お曲目が非常にたくさんあって、いろいろなタイプの曲を学んでいけるというのが、まず面白い変化だと思います。
踊りや舞の形も曲によって違いますし、それぞれを楽しむというのが一番面白いところなんじゃないかと思います。
お能の場合、謡いだけで舞う「仕舞」の段階もあれば、楽器が入って舞う段階、実際に装束をつけて舞う段階もあって、そうやって段階を踏んで進んでいける楽しみもあると思います。
お能を日常に取り入れることで、日々の生活や心境にどのような良い影響があるでしょうか。
僕がいつも言っているのは、お能の謡いは腹式呼吸が基本になるので、本気で謡いの稽古をしていると、実際に体温が上がるんです。
謡いの力で体温を上げることは免疫効果を高めることにつながる、これは実際に立証されている話なので、よくその話をして、「そのくらい稽古してくださいね」と伝えています。
昔は「正座が膝に良くない」なんて話がありましたけど、あれは大嘘です。能楽師で、正座のせいで膝が悪くなった人なんて誰もいませんから。
長い曲だと2時間くらいになりますから、舞台の上で2時間正座するというのは、僕らにとっては普通のことなんです。

これからお能を始めてみたい、体験レッスンを受けてみようかと迷っている方へのメッセージをお願いいたします。
これは何にでも言えることですが、日本の古典芸能というのは、もともと日本人の生活の中から生まれてきた芸能なんです。
だから、日本人にとってのエッセンスがたくさん詰まっていて、本来は日本人にとって最も親しみやすいもののはずなんですよね。
それを踏まえて、ぜひ「始めてみよう」という気持ちを持ってほしいなと思います。
楽しみ方はいろいろありますが、まずは一度、日本の文化そのものに触れていただきたいんです。
これは、別に本職になってほしいという話ではなくて、たとえば海外の方とコミュニケーションを取るときに、自国の文化をきちんと説明できるということが、すごく大事だと思うんですよね。
海外の方には、自国の文化を大切にしている人をリスペクトする、という傾向があります。
だからこそ、「自分の国にはこんな素晴らしいものがあるんですよ」と、海外の人にきちんと説明できるような日本人になってほしいなと思います。
そのためにも、一度ちょっとかじってみたらどうかなと思いますね。
まとめ
山中先生、ありがとうございました!
伝統文化オンラインでは山中先生の「お能(のう)入門講座」を開講しています!
ぜひ、気軽にご参加ください。
また、2026年10月4日(日)に「第34回 櫻詠会 故・政木哲司追善能」が開催されます。
能に興味がある方は是非、お申込みください。
第34回櫻詠会/10月4日(日)午後1時開演/国立能楽堂
能「清経」 雨宮悠大
狂言「二千石」野村萬斎
能「道成寺」シテ 山中一馬




